お葬式に行く際の持ち物のなかに入れられることになるのは、不祝儀袋や袱紗(ふくさ)、数珠だけではありません。
涙をぬぐうための「ハンカチ」も一緒に持っていくことになります。
では、お葬式の場に相応しいハンカチというのはどういうものなのでしょうか?
基本的には白もしくは黒のものを選ぶ
お葬式の場では、派手な装いは厳禁とされています。
喪服にせよかばんにせよ靴にせよ、慎みを持った色合いのものを利用することが求められます。これはハンカチでも例外ではありません。
お葬式に持っていくハンカチは、黒もしくは白のものを選ぶのが基本です。
黒は、言わずもがなではありますが、「喪の色」であり、喪服との親和性も極めて高いものです。手に握ったり膝に置いたりしたときも色が浮き上がることがなく、お葬式にもっともふさわしい色だといえるでしょう。
対照的に白は、白無垢などのように、「ハレの日の色」を示すもののように思われがちです。
しかし白は、実はお葬式の場にも相応しい色なのです。白装束を着せて故人を送り出すように、白い色は弔いのときにもよく用いられます。
余談ではありますが、この「白と黒、両方ともが喪の色として用いられるようになった経緯」は、やや複雑です。
宮中では明治維新の後に「喪服は白から黒へ」と変わりましたが、これはあくまで宮中などのときの喪の色として用いられていただけにすぎませんでした。
市井の人の喪服が現在のように「黒」になったのは、第二次世界大戦がはじまった後のことだとされています。庶民の弔いの色は、「白」とされていました。
なお、昔の本などを見ると、夫に先立たれた女性が白い喪服を着て葬儀に参列する姿なども描かれています。これは、「あなた以外の人には嫁ぎません」という意味があり、「二夫にまみえず(再婚しません)」という意思表示の装いであったともいわれています。
ただ、白い喪服は汚れやすく、管理がしにくいものです。そのため、「死」がすぐ身近に着てしまうことになった大戦時~終戦時に、喪服の色が、汚れの目立ちにくい黒色になったとされています。
このような流れを辿っていたため、現在でも「お葬式の色は黒か白」となっているのです。
飾りや色のバリエーションはどこまで容認される?
お葬式のときのハンカチとしてもっとも望ましいのは、やはり黒もしくは白の無地のものです。
改めて「葬儀用に」と買い求めるのであれば、黒のハンカチを選ぶとよいでしょう。日常使いにもしたいというのであれば、白のものが適当です。
もっとも、お葬式における「ハンカチのマナー」は、「黒もしくは白の無地のもの以外は、絶対に使ってはいけない」というものではありません。
ある程度色がついたハンカチでも容認されます。薄い青色や薄いピンクなどの色はバッドマナーとまではいえないとされており、使っても問題がないと考えられています。
もちろん白いハンカチや黒いハンカチがあればそれにこしたことはありませんが、葬儀とは急に訪れるものです。手持ちに黒や白のハンカチがなく、時間も迫っているということであれば、派手ではない色のハンカチを使ってもよいでしょう。
ただ、赤色や黄色などの派手な色のハンカチは、当然避けるべきです。
「柄」についても見ていきましょう。
お葬式に持っていくハンカチは、柄が入っていないものが基本です。無地のシンプルなハンカチが望ましいことは覚えておきましょう。
しかしこれも、色同様、「絶対に無地でなければならない」というものではありません。上品なレースの縁取りがついたものや、控えめに刺繍が入ったものなどは、お葬式の場にも持っていくことができます。
特に、同じ色で刺繍されたもの・同じ色のレースがついたものは派手になりにくいので、選びやすいでしょう。
ただ、光る素材が使われていたり、お葬式の場に相応しくないモチーフが入ったりしているものは、当然持って行ってはいけません。
現在は1000円程度で購入できる
お葬式に持っていくハンカチは、現在では通販などで手軽に買うことができます。ブランドにこだわらなければ500円程度で買うことができますし、ある程度こだわっても5000円を超えることはほとんどないでしょう。
お葬式に持っていくハンカチは、「喪服」などよりは神経質にならなくても構わないものです。そのため、急場の葬儀であるならば、派手なものでなければ可とはされています。
ただ、ある程度の年齢になったのであれば、急な葬儀のときでも慌てずに済むように、1枚はあらかじめ買っておきたいものです。
なお、現在販売されているお葬式用のハンカチは、どれも男女兼用であることを前提として作られているのが基本です。
もちろん日常使いにするのであれば別ですが、「お葬式のときにだけしか使わないハンカチだ」と割り切っているのであれば、1家族に1枚~2枚程度でも事足りるでしょう。